営業に連れられてゲートを抜けると修羅場であった。
プログラマの前途が暗くなった。
入り口のそばで足が止まった。
向かい側の座席からSEが立って来て、部長席の前の受話器を取った。
顧客の怒声が流れ込んだ。
SEは手をいっぱいに広げて、遠くへ叫ぶように、「仕様なんです、仕様なんです」
IDカードをさげてゆっくり入館して来た男はイヤホンで耳の穴をふさぎ、目に大きなクマを作っていた。
もうそんな状況かとプログラマは開発現場を眺めると、人が寝ていたらしい毛布が床に寒々と散らばっているだけで、彼の心はそこまで行かぬうちに闇に呑まれていた。
「お客さん、仕様です。議事録にもそうあります」
「ああ、話にならんじゃないか。部長はいるかい。また作り直しだよ」